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最高裁判所第三小法廷 昭和44年(オ)580号 判決

上告人

仲岡建設株式会社

代理人

秋山昌平

被上告人

水野恒三

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人秋山昌平の上告理由について。

原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)が適法に確定したところによれば、訴外(第一審被告)高橋県蔵は、土木建築業を営む上告会社に配管工として雇用され、同会社が東京都三鷹市上連雀において行なつていた上水道管敷設工事に従事中、昭和四一年一一月一二日右工事現場において、同じく右工事の作業をしていた被上告人に対し、作業に使用するため「鋸を貸してくれ」と声を掛けたところ、被上告人が自分の持つていた鋸を高橋県蔵の方に向けて投げたことから、さらに右両名間に原判示のような遣り取りがあつたあげく、高橋県蔵が被上告人に対し原判示暴行を加えたというのである。右事実によれば、被上告人が被つた原判示損害は、高橋県蔵が、上告会社の事業の執行行為を契機とし、これと密接な関連を有すると認められる行為によつて加えたものであるから、これを民法七一五条一項に照らすと、被用者である高橋県蔵が上告会社の事業の執行につき加えた損害に当たるというべきである。したがつて、これと同趣旨の原審の判断は正当である。

原判決に所論の違法はなく、論旨は、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(下村三郎 田中二郎 松本正雄 飯村義美 関根小郷)

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